【ほぎ屋レビュー】奈落『夢の蛇』
夢の蛇
奈落
奈落さんのWebサイト『奈落の部屋』にて公開されている小説『夢の蛇』のご紹介です。
蛇により股間が女性器と化した男性の性生活変化を描いた読み切り小説
奈落さんといえば、黎明期より数々のTSモノ小説を同人誌やWeb上で発表されてきた古参作家さんです。TSモノ小説同人誌『そのKE』やWebサイト『奈落の部屋』での長年に渡る作品発表、現在はさらにブログ『奈落のネタ帳』やX上でも新作を公開されるなど、活動の幅を広げ続けています。
本作の主人公は一人称を『僕』とする男性。作中の振る舞いや言動から、まだ若いことが伺えます。 彼はある日、夢の中で "大きな蛇" に遭遇します。蛇は彼の股間へやってくると、男性器を咥え込んでしまいます。
僕は『夢』を見ていた…
大きな蛇がニョロニョロと僕の股間にやって来た。 牙のない口を広げ、パクリと僕のオチンチンを咬わえてしまった。 蛇の舌がチョロチョロとその先端の敏感な所を刺激する。 タラリと先走りの汁が流れ始めた。
蛇による刺激ですっかり精液を絞り尽くされると、なんと蛇は男性器を咀嚼し始め、その跡は女性器へと変化してしまいます。
やがて、僕のモノを吸い尽くした蛇は、遂にムシャムシャとソレを食べ始めた。 不思議と痛みはなかった。 オチンチンは金玉と一緒に跡形もなく喰べられてしまった。 その跡は一筋の割れ目となっていた。
初めての女性の快楽に気を失った主人公。目覚めるとやはり股間は女性と化していました。その後蛇との契約により、昼間は蛇が男性器の代わりをし、夜の "食事 " の為に蛇が出ていく間と毎休日は、股間だけ女性として過ごす、という生活を送ることに。
しかし、それも昼間だけで、夜になるとオチンチンは消えてしまう。 蛇が目覚め、外に出て行ってしまうからだ。 『食事』をしに行っているらしいが、何を食べているかと問うと「淫らなもの」と答えが返ってきた。
そんな生活の中、ある日親友の『裕司』に見つかってしまった主人公。主人公の振りまくフェロモンにあてられた裕司は、ついに主人公を押し倒してしまい...
気付いた時には、フェロモンは部屋の中に充満していた。 既にショーツが湿りけを帯びている。 レオタードの股間にも染みが浮かんでいた。 突然、裕司が抱きついて来た。
この作品のここが良い!
- 男性器を蛇に食べられてしまうという珍しいシチュエーション!
- 主人公『僕』の初々しさが可愛い!
- 完全女体化までのじっくりとした時間経過がエロい!
- 各濡れ場やシチュエーションの退廃的な空気感がそそる!
本作は読み切り作品ですが、その中にはオナニーから本番まで、複数の濡れ場が設けられています。それでありながらもシークエンスや時間経過による主人公の置かれる生活や状況の変化が丁寧に描かれており、読み切り作品特有の手軽さと長編にも負けない読み応えの両方を兼ね備えています。 近年の作品は "本番シーン" に主軸を置き、性転換過程や人物の性生活等を省略する傾向が強いと感じますが、本作は女体化による性生活の変化を楽しめる作品となっているのが特徴的です。
また冒頭で食べられ失われてしまう男性器と、その日常生活における処理方法として、本作では「日中に蛇が男性器に化ける」という設定がなされています。TSモノの定番でもある「女性になってしまった喪失感や屈辱感」を演出する場合、再び男性器が生えるなどの可逆的な設定を採用するのは少々難しいところです。しかし本作では「本物の男性器は無く、蛇が化けた偽物」「蛇は食事の為に居なくなる」「既に股間は女性器となってしまった」という実質的な不可逆設定を用いることにより、主人公の喪失感を演出することに成功しています。とても技巧的です。
「いいぞ。」 僕は小声で蛇に言った。 「そうか?」 の声と同時に僕のオチンチンが蛇の頭に変わっていた。 そしてズルズルと這い出してくる。 場所が場所だけに、声を上げる訳にはいかない。 僕は快感を堪えてじっとしていた。
これが、毎土日に繰り返されるのかと思うと気が重くなる。
ここはもう少し...
前述のとおり、本作には主人公の身体的なシークエンスが含まれています。ただしこれが最も詳細に描かれているのは作品冒頭の性器変化シーンであり、それ以外の心理変化や、女性的な体型への変化過程などは、少々さっぱりとした描写となっています。これは本作が読み切り作品であり、また作品の主軸が主人公の性生活が変化していくシチュエーションにある為であり、全体のバランスとしては妥当と言えるでしょう。 しかしながら中長編作品のような長い時間経過の中で変わっていく主人公をじっくりと楽しみたい、という方は物足りなさを感じるかもしれません。
また、近年の作品に多く見受けられる "濃厚な本番シーン" は少々少ない印象を受けます。これもまた本作が主人公の性生活の変化が主軸であることから妥当であり、またそれをカバーできるほど作品全体に漂う退廃的で淫猥な空気感があるので、気にならない方のほうが多いかとは思いますが、刺激的な女性の快楽により男性としての我を失っていく「無様感」「屈辱感」「征服感」のようなものを求めている場合には、シチュエーションが刺さりにくいかもしれません。
まとめ
男性の性器変化とそれによる性生活の変化をじっくりと楽しめる非常に優れた作品です。是非ご一読ください。
ほぎ屋でした。